中村亨のビジネスEYE

ワークマンの秘密

BUSINESS EYE

2019年3月期に8期連続で最高益を更新した、あの有名企業の事例をご紹介します。

個人向け作業服チェーン最大手のワークマンが、アウトドアに特化した新業態で快進撃を続けています。

大手アパレルが苦戦する中、単独売上高669億円と前期比19%、営業利益は20%を超える伸びを記録しました。(参考:日本経済新聞/2019年7月9日)

今回の【ビジネスEYE】では、ワークマンの快進撃の秘密に迫ってみましょう。

1.供給過剰に勝つデータ戦略

ワークマンは作業服・作業用品を主力商品として手がけてきました。
このため既存の路面店は、今でも建設業界などの「職人向け」もしくは「プロの店」のイメージが強いです。

しかし、主要顧客である建築業界の作業者が年々減少し、高齢化も進行しており、飽和状態。若年層や女性の需要の取り込みが大きなテーマとなっていました。

顧客開拓の戦略を推進するきっかけとなったのが、プロ向けの商品開発で培った優れた機能性と価格の低さに着目する人が思わぬ形で出てきたこと。

例えば、作業現場向けの防寒服や防水服が釣りやバイクの愛好家の間で話題となったほか、飲食店などの厨房用に開発した靴は滑りにくさが受け、妊娠中の女性が購入するケースが増えているそうです。

そのチャンスにアウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店「ワークマン・プラス」を開店し、新業態では通じない勘と経験を補うため、徹底したデータ戦略に注力してきました。

・10年売り続ける作業服の品揃えを全店舗で97%統一
・店舗レイアウトを標準化(広さは100坪に統一)

上記2点から、どの商品をどの店舗に置けば、いつ売れるかといったデータを膨大に蓄積して活用。
供給過剰に悩むアパレル業界で生き残るために最も重要である需要予測を研ぎ澄まし、破竹の勢いを手にすることになったのです。

2.データ戦略の担い手は…?

データを活用するために、入社2年目から研修を徹底しているのが、実はエクセル!エクセルを使ったデータ分析ができることが、部長への昇進条件になっているほどです。

世間ではAI(人工知能)をいかに使いこなすかが議論されている中で、エクセルが飛躍の担い手になっていることには、本当に驚かされました。

使いこなせる社員が限られるAI技術よりも、エクセルで作った客観的な数値をもとに、既存店改革への議論を進め、社員全員でデータを使いこなせる社風を作る―
想定以上に話題となったため欠品が出るなど、データ戦略は万能ではないものの、社員一丸となって改革に進む姿勢に、新たな価値を生み出すきざしを感じますね。

欠品などの機会損失を改善すべく、更なるデータ活用に取り組むための部署を新設し、手薄だったネット通販強化にも乗り出すワークマン。

本業は作業服で、ニッチな市場で勝負している印象も強いですが、データ活用の方法や社風の盛り上げ方については、どの企業も学ぶ点が多いと言えるのではないでしょうか。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。